イメージの世界・唯識の世界に左右される私たち
2008-12-27


これまでの再生装置及びソースの周波数分布(スペアナ)の測定を行って来たが、残念ながら、ノイズレベルが測定出来ないのでダイナミックレンジ、歪み等については、測定結果には、反映されていない。

 CDとLPのソースの周波数測定結果の比較では、「そうみれば、その様にみえるかなー」という程度で、聴感上に感じられる両者の違い程の相違点は見いだせず、むしろ、「CDとかLPとか先入観を持っているから、そんな風に聞こえるのかな。」とも考えたくなる。

 しかし、超高域のダイナミックレンジの測定データがあれば、かなり的確な比較が出来ると思う。つまり、前回、「CDはレンジは伸びていないが、ピークレベルが高い」と指摘したが、CDは、超高域では、帯域の上限は、急峻に落ちているが、LPは、徐々に下降していくが、同時にノイズレベルが増すので、ダイナミックレンジは狭くなるといった見方も出来なくはない。スペアナでは、20Khzという人間の聴覚の限界レベルでのノイズか楽音かを分離して見せることが出来ない。

 また、比較に用いたデータもサンプリング周波数44100Khz以下(WAVファイルの上限)の制約があるので、20Khz以上の超高域でLPがどの様に周波数分布をしているかを知ることが出来なかった。

 いずれにしてもCDやLPといったソースの違いよりも、アンプやスピーカー等の再生装置による違いの方がずっと大きく、聴感上の変化は、再生装置による違いが影響している可能性が高い。

 今回は、スピーカーを取り替えて周波数を測定できなかったが、おそらく、この違いによる聴感上の変化が最も大きいだろう。アンプによる違いは、聴感上もハッキリ判る程であるが、スピーカーの違いはもっともっと大きいだろう。

 「デジタルだから音がキツク嫌で、アナログだから人間らしくウォームな音がする。」というのは、どうやらイメージの世界の様だ。

 但し、アナログイメージ志向の人が、「少しでもまったりした音を。」とトランジスター式アンプ(直流・交流を選ばず)やMOS-FETアンプ、あるいは、デジタルアンプから、古風なノスタルジーと、視覚的イメージの楽しさに溢れた真空管アンプ、例えば300Bシングル等にアンプシステムを交換したとする。

 そうすれば、再生帯域とダイナミックレンジが、半導体に比べて格段に狭いので、高級なCDやトランスポート、SACDプレイヤー等で、最新の録音(特にオーケストラやジャズフルバンド等の大編成)と組み合わせると、超高域や超低域でクリップが生じるので、「高域では刺激的な音のみが目立ち、それにしては、情報量が低い」という評価が生まれる可能性がある。

 そうした人達は、「やっぱり、アナログは、アナログ、LPレコードだよ。」とブラックディスクの再生にのめり込んでいく。当然、LPは、再生周波数レンジは広く、ダイナミックレンジは狭いという特性を持っているので、真空管アンプでも、「クリップしない安全圏の範囲内」で歪みが少ない音で再生出来るだろう。

 「やっぱり、LPの方が音が澄んでいるよ。」などと言いかねない。

 こうして、ますます、LPレコード再生と真空管アンプの組合せの評価が高まっていく訳である。

 また、最近のスピーカーシステムは、タワー型、行灯型等の狭い住居空間の事情を反映して、低音再生に不向きなものが多いので、歪んだ高域のみが強調されるので、余計にその様な傾向になるだろう。


 実際には、SACD、CD、LPでも再生帯域は、巷で言われている程の差はないのである。

 むしろ、アンプとスピーカーシステム、そして、録音そのものの良否の影響の方が聴感の印象を左右する。そういった点を考えると、注意しなればならないことは、次の通りとなる。

@良い演奏、良い録音のアルバムを選ぶ。
A十分な再生帯域とレンジがある装置を利用する。

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