迦瑠羅とローゲ(ロキ神)との驚くべき共通点
2010-11-25


禺画像]
迦瑠羅像をクローズアップしたら、こんな具合、凄く精巧に出来ていてマニアの心をくすぐる。

 迦瑠羅は、火の化身であると、佛大の仏教芸術の授業で習った。そうだと思う。つまり、ワーグナー楽劇「神々の黄昏」に出てくるローゲと同じ性質を持つ。

 これは、北欧バイキング神話に出てくるロキのドイツ訛りの呼び方。オーディンの手下で、オーディンは、戦争と死の神である。

 バイキング映画で、勇敢な戦死が船を燃やして葬られる葬儀の場面が登場するが、これは、死者をオーディン(勇者)、炎をロキ(ローゲ)になぞらえている。

 ロキ(ローゲ)は、全てを清める不思議な炎である。だから、神々の黄昏でワルハラが炎上して火につつまれたのは、全ての邪悪のものが清められ、ラインの乙女に抱かれた指輪が封印されることを示している。

 実に不思議なのは、この関係は、不動明王と迦瑠羅(カルラ火)との関係に類似している点である。

 日本の仏教説話、神話学でこの点を指摘して人はいないだろうか。不動明王は、やはり、天目であるが、剣を持つ戦の神である。仏敵を退散させる強い力を持っている。

 その背後の炎に助けによって不浄のものどもを焼き払うのである。

 不動明王は、アチャナ・ナータと呼ばれ、密教の尊格で、大日如来の化身である。大日如来は、世界の中心であり、まさに、オーディン→ヴォータン(オーディンのドイツ訛り)に通じる。

 突飛もない考えだが、北欧神話のルーツと密教の天のルーツはどちらもユーラシア大陸を由来としている。

 例えば、フィンランドにも北欧神話の伝統があるが、この民族は、北アジアから移動してきたという。一方、不動明王等は、恐らく、インドの密教圏から大陸を由来して伝来したものと考えられる。

 北欧系の伝説、ケルト系であるが、あの怖ろしい、ベオ・ウルフ伝説に出てくる鬼の怪物、グレンデルとの戦いは、結局、「剣伝説」の部類に分類されるが、あの京都一条戻り橋の上で鬼の腕を切り落とした話と驚く程一致している。

 つまり、北欧神話と迦瑠羅、不動明王との関連性を指摘することは、それ程、奇想天外ではないと思う。

 また、この迦瑠羅の奇妙な嘴は、霊鳥を意味している。北欧神話では、世界の中心に生えるイグドラシルの樹のてっぺんに住む雄鶏を示す。つまり、世界の中心を照らす光、大日如来にも通じるものがある。

 ところが、ガルーダのもととなったインド神話では、その様な象徴的な役割は描かれていない。

 元々のインド系の神に北方アジア系の神を融合させて、迦瑠羅として崇められる様になったのだろう。

 いずれにしても、大日如来と様々な天目の仏様達との関連は、比較文化の視点からみれば、面白い側面が見えてくるのである。

 百目鬼の戯言であるけれども。
[仏教芸術]
[佛教大学]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット