「働く意欲がなくなる。」「3K職種の従事者がなくなる。」との批判もあるが
2009-10-11


禺画像]
この本は、雑誌「ビッグイシュー」127号に紹介されていたので購入した。

 経済学の専門家の方が書かれているので、難しく私には判りづらい。ベーシック・インカムのコンセプトに至るまでの西欧の社会思想史や経済学史等が参照されているが、そういったことが、どの様な意義があるのか私には判りかねる。

 社会学的な立場で、ベーシックインカムの問題を把握しなおせば、かなり変わってくると思う。
 
 ベーシックインカムは、「究極の福祉」とも言えるが、やり方を間違えると、「ばらまき」と捉えられてしまう。

 「究極の福祉」と「ばらまき」とのボーダーラインはなんだろう。

それは、下記の3点であると私は考えている。

@最低限の生活レベルを保証する給付水準であること。

A受容者・国民に不公平感が生じないことである。

B財源に無理がなくて、増税、新たな国民の負担増につながらないことである。

@自民党が実施した個人給付金の給付水準は、@にはとうてい満たず、それどころか景気浮揚効果があったかどうかは疑問である。
民主党政権の「子供手当」や「高校無償化」はたしかに特定の受容者層には、有益かもしれないが、生活レベルを保証する訳ではない。

A個人給付金は、富裕層等の問題もあったが、ほぼ国民に公平に分配されたと言えるが、金持ちの年寄りと貧乏人の単身者への給付額で、金持ちの年寄りの方が給付額が多いといった例もあり、金額は一律にすべきであった。
 民主党の子供手当や高校無償化は全く持って不公平である。
 国民には、単身者や給付対象外の学生や子供を持った世帯もある。また、高校以外の高卒レベルの資格が与えられる専門学校等の扱いはどうなのか、色々と問題点も多い。

B民主党の子供手当や高校無償化の財源としては、扶養家族控除の撤廃等、対象外の国民や企業に負担を強いることになりそうな動きとなっている。高校無償化にせよ、子供手当にしても給付対象者を限定して、財源を抑えるべきである。

一部の生活階層だけに「お得感」を与える施策は、結局、政権の国民支持率を下げることにつながっていくのではないだろうか。

結局、「無条件給付」以外の「下賜金」は、国民の不平、不満を煽る火種にならざるを得なくなってくるだろう。

ベーシック・インカムの基本コンセプトは、これらの施策とは根本的に異なっている。

全国民に最低限の収入を保証する為に生活資金を給付する換わりに、特別な理由がない限り、生活保護とか特定階層の為の無駄な優遇措置を止めて財源を確保する施策である。

この本では、国民1人当たり最低25万円の給付を実施することで、高校無償化や子供手当、生活保護、老齢年金等の制度を廃止する可能性をうたっている。

民主党の年金政策で国民全員に基礎年金の給付を保証するとしているが、25万円の水準には遙かに及ばない。結局、貧困層を救済することは出来ないし、今でもこれまで年金を払って来た高齢者から「不公平だ。」との声も上がっている。

結局、既存の年金制度は、高齢者の生活基盤を安定させるには財源的にも給付水準的にもほど遠い「前世紀の遺物的制度」で制度疲労によって使い物にならなくなっている訳。

この様な、一切の福祉制度を廃止する換わりに、全国民に最低限の生活資金を給付するシステムは、その「選別・選定」作業に余分なコストがかからないことや、生活保護の受給要件の様に、「消費制限・生活水準制限」という「差別」を実施する必要なくなるので、こういったセーフティネットワークにつきものの「暗いイメージ」を払底することが出来る。

有産階級にも当然、25万円は給付されるが、それぞれの所得水準に応じて、消費促進につながるので、内需の多様化・活性化が期待出来ることになる。


続きを読む

[ブックレビュー]
[本]
[住宅]
[情報/社会]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット