禺画像]
「太陽系をつくる」の模型の話は、前回の通りだが、今回、特に良かったのがマガジンの内容。
天文や科学史関係のネタで有名な雑誌と言えば、いわずもがな「ニュートン」であるが、あの雑誌は、定期購読していたが、あまりにつまらないので、やめてしまった。
その理由として、専門的な様子でありながら、記事の底が浅く、マニアごのみでなかったことや、科学イラストのクセ(絵のクセなんだからどうしようもない。)が非常に嫌だった点である。動物や天然事象への愛情が絵描きさんに感じられない様な絵だった。影の付け方が特に嫌だった。
「太陽系をつくる」のイラストは素素晴らしい。実写映像とみまがう様な出来映えのものが多い。特に火星の人面石等のイラストは、最高傑作だと思う。
惑星探査機では、その詳細な米ソの観測史、探査機のタイプや航法、メカニズムの詳細なデータも掲載されている。カッシーニ(ホイヘンス)がタイタンに着陸し、実際には、700枚画像を撮影していたのにプログラムミスで350枚しかデータを受信出来なかったことや木星探査機のガリレオは、プルトニウム燃料を積んでいたが、木星への衝突後、分解し、プルトニウム燃料が木星内部の圧力の効果で、熱核爆発が発生し、そのキノコ雲が木星表面に現れて、地上からアマチュアの望遠鏡でも観察出来たこと等、知らなかった事実も多い。
天体観測史では、2000年前のギリシャで、製作された現代技術顔負けに太陽系儀の話。
この機械は、木製の枠に収められていたが、青銅製のギア等、金属部品で構成されていた。海底に沈んでいたギリシャ船から引き上げられた。内部エックス線調査を行ったところ、非常に精密なギア等の機構部品が確認出来、そのエックス線写真が掲載されている。凄いのは、この機械を使うと、月食、日食等の発生日時が予想出来る等、超精密な機械であったこと。
18世紀後半に初めて、大型反射望遠鏡を製作したウイリアム・ハーシェルの話は、有名だが、その後、1840年代に、ウィリアム・パーソンズ(ロス卿)が、口径1.8メートルの当時としては巨大望遠鏡(実際、この口径の望遠鏡は、20世紀前半まで、その後、作られなかった。)を完成し、銀河系外星雲の観測を行ったこと。更に、この望遠鏡が、現代になって復元されており、最新式の装備にリフォームされて使用されていること等、実に興味深く面白い話題が掲載されている。
この外、インド天文学では、特にヒンドゥーの曼荼羅風の天文図、あるいは、私が、つねづね提唱している「木星の引力(潮汐力)が地震の原因となっているという考え方が、実は、「ジュピター・エフェクト」と呼ばれる学説が発表されており、木星を含めた惑星の配列と地震のとの因果関係を説明しようとしている記事がみられた。
実際に、現在、製作している太陽系儀を使用して、ジュピターエフェクトが起こりえる惑星配列の再現法等も解説されている。
ここでは、木星や大型惑星の潮汐力が太陽表面の活動に影響を与え、太陽黒点の増加、あるいは、熱量の低下等で地球の大気・気象に影響を与え、それがプレート移動に伴うエネルギー放射への影響へと転移して、地震が発生すると説明している点である。
例えば、兵庫の大雨、異常気象と静岡大地震との関係、阪神大震災発生の前年の夏にみられた異常な暑さ等も、この様な木星を始めとする大型惑星の活動が影響しているという説。
しかし、この雑誌の解説でも述べている様に、惑星の潮汐力が気象に影響を与えているという考え方には無理がある。むしろ、太陽、木星、月等の潮汐力の複雑なベクトルの組合せが元々弱っていたプレートや地盤に影響を与えて地震発生の引き金になるという考え方の方が妥当な感じがする。